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【開催終了】「第1回産地カンファレンス2017 in 高岡」報告

[日時]平成29年5月19日(金)
[会場]工場見学:富山県高岡市オフィスパーク8-1 株式会社能作
カンファレンス:富山県高岡市戸出石代307-3 高岡法科大学ミレニアムホール
[主催]一般社団法人 日本工芸産地協会
[協賛]西日本旅客鉄道株式会社
[後援]経済産業省・高岡市
[協力]株式会社能作
[来場者内訳]当日は総計195名の方にご来場いただいた。

分類1 分類2 人数(人) 小計(人)
行政 省庁 8 43
9
市町村 24
独立行政法人 2
メーカー

ものづくり団体

会員 44 76
工芸メーカー 29
財団法人 2
協同組合 1
プロデューサー

デザイン

プロデューサー 12 14
デザイン 2
流通 小売 5 12
流通 7
観光交通 鉄道 2 6
航空 1
観光 1
開発 2
金融 金融 2 2
報道 TV局 2 5
雑誌 2
新聞 1
その他 学校 2 37
企業 9
金融 2
個人 14
団体 10
総計 195 195

 

◆レポート

3月1日にパレスホテル東京にて発足の記者会見を行い活動を開始した日本工芸産地協会が、毎年開催していくことで予定している工芸産地のカンファレンス。記念すべき第1回目が富山県高岡市の株式会社能作の新社屋で開催された。

株式会社能作は1916年創業の鋳物メーカー。当協会の会員企業でもある。産業観光をテーマとした新社屋を4月に竣工したばかりの株式会社能作に協力をいただき、来場者に新社屋と工場を見学してもらい、カンファレンスで能作克治社長から新社屋竣工の経緯と今後の展望について、中川政七協会会長からはクリエイティブマネジメントについての講演を聞いてもらうことで、各産地での今後の展開に活かしてもらおうという趣旨でのカンファレンス開催となった。

カンファレンス当日は、能作社屋から立山連峰が美しく見えるほどの好天に恵まれた。
会場は北陸新幹線・新高岡駅から車で15分ほどの立地。遠方からのご来場も多いことから主催者側でシャトルバスを4便運行し、約60名の方にご利用いただいた。

    

午前11時過ぎに新高岡からのシャトルバスが到着して受付がはじまる。
来場者には、工場を自由に見学してもらい、1階カフェ(IMONO KITCHEN)と2階の広間を開放してランチを召し上がっていただいた。

エントランスを抜けると、壁一面に配置された色とりどりの鋳物の木型が目に飛び込んでくる。

これは能作の鋳物の製造に使用する現役の木型で、職人は日々この木型倉庫に型を取りに来て仕事をされる。アートのようでもあり、パズルのようでもあり、出来上がりの製品を想像しながらたのしく見ることができる。

1階には、TOYAMA DOORSと銘打たれた、観光案内ブースがある。

手前のテーブルにはプロジェクションマッピングで、富山県の様子が映し出されている。そして奥の小さな戸棚には、200種類もの富山県の観光地の案内カートが設置されており、自由に持ち帰ることができる。これは株式会社能作・産業課観光部の社員が自前で制作されている。大変な労力がかかっている。

NOUSAKU DOORSの隣は、FACTORY SHOP とNOUSAKU LAB。
SHOPでは能作の製品を購入できる。LABでは実際の鋳物の体験をすることができるが、この日は裏千家の木村宗慎先生にお越しいただいて、お茶席としてつかわせていただいた。LABの前にある給水器では、能作の錫の器で氷水をいただくことができる。熱伝導率の高い錫の器で飲む氷水は本当に冷たくて美味しく、ぜいたくな給水器である。

ランチやカフェがたのしめるIMONO KITCHEN当日は夕方の懇親会でも使わせていただいた。
ガラス張りで天井も高く開放的で気持ちの良い空間となっている。

錫の板であしらわれたNOUSAKU CUBE個室となっていて、会議や会食などに使用できる。

いよいよ工場見学。
鋳物の工場とあって、『鋳』『錫』など、標識も鋳物でつくられたもの。標識ひとつとっても非常にユニークで趣向がこらされている。

さて、工場の内部は2階のデッキから一望できる。このデッキは100人ほどの人が乗っても問題のない強度に作られているとのことで学校からの社会見学や観光バスでの団体の見学でも一度の多くの人に説明をできるしくみにしておられる。

工場内は作業の大きな音がするので、通常は見学者にインカムを配布して引率者が説明をする運用をとられている。
株式会社能作の社員は旧社屋でも年間1万人の見学者の対応をしてこられているので、説明が非常に巧みである。すでにノウハウの蓄積を感じるが、さらにブラッシュアップされていくことだろうと思われる。

工場内では職人が作業をされているすぐ近くで見学をすることができる。金属を溶かす熱、音、鋳型をつくる砂のほこり、におい、大きな設備、加工中の製品、さまざまなものを実際に見て感じることができる。

 

また、職人にとっては、たくさんの方に見てもらうことが仕事に誇りを持つことにつながるとのことで、カンファレンス当日も職人さんのお昼の休憩時間を通常より1時間遅らせて工場見学に対応をいただいた。

カンファレンスは、能作社屋より徒歩で移動して、高岡法科大学ミレニアムホールで行うこととなった。立山連峰が遠くに見え、とても気持ちのよい好天にめぐまれ、スムーズに移動できた。来場者の皆様に感謝したい。

予定通り13:30よりカンファレンスがスタートした。
冒頭、中小機構北陸・本部長 占部治様よりごあいさつをいただいた。
正しいことを伝えるためには、より注意深く、より丁寧に話をするよう心がけたいとのお話をいただいた。
貴重なお話をありがとうございました。

基調講演1は能作克治社長より産業観光が産地の未来を切り拓く をテーマとする講演となった。
新社屋オープン後、1ヶ月足らずで来場者が1万人を超え、体験工房が大変な人気であることについて話があった。本題としては、高岡の歴史、近況、株式会社能作の歴史、取り組み、技術などの話の後、産業観光の考え方、効果について、そして能作からの提言ということで話がすすみ、その後、職人が誇りを持って仕事ができるようになるべきと能作社長が強く思うようになったきっかけと、決意、取り組みについてムービーが放映された。非常に感動的な内容であった。

基調講演2は中川政七協会会長よりいまものづくり会社に求められるクリエイティブマネジメントをテーマとした講演があった。日本工芸産地協会を設立する運びとなった背景、日本の工芸の現状、産業革命と産業観光が産地の未来を切り拓くという話があった。その後、デザインだけではものは売れるようにならない。デザインと経営の相互理解があって有意義な取り組みとなり得るという講話となった。

協会顧問・林芳正参議院議員よりごあいさつをさせていただいた。町づくりには若者、馬鹿者、よそ者が必要だ。ものづくりには、つくる方と売る方とコミュニケーションが非常に大切だ。これから地域に人を集めるには、産地という言葉を重視してそこでしか作れない何かを生み出していかなければならない。日本工芸産地協会に集う経営者は優秀。日本の成長戦略にはかような経営者が多数出てくることが必要で、是非一緒に盛り上げていきたいという話であった。

続いて能作克治、中川政七、林芳正、3氏が登壇し、会場の皆様とディスカッションを行った。

①福島県昭和村 からむし織の生産者
繊維の原料、加工、製品まですべて手作業。能作でのものづくりは工業化されている。
家内制手工業でうまくいっている事例を紹介してほしい。

 

能作 高岡銅器ももとは手作業が多かった。現在は自動化されている部分が多い。実は手作業が多く残っている工芸は、それが売りになるのではないか? 現在でも昔ながらのやり方が残っていることをPRできる。
 農業でいえば、有機、手作業というだけで高く売れる。しかしコストはかかる。青森のりんご農家はミラノでも有名。
大切なことは手がかかっていることを皆がわかっている状態にすること。自分の村で10%の人に買ってもらう<日本中の0.1%に買ってもらう範囲を変えればよい。ブランド化をストーリーをこめてする。

中川 どこまでを手仕事にして、どこまでを手仕事でなくするか。手でなくてもよいところを変えても価値は変化しないのではないか。お客さんがそれをどう感じるかを予測することが大切で、自分たちがこれでいいんだと胸を張って言える状況にすることが大切。

 

②名古屋市 デザイン会社
日本工芸産地協会の今後の展望。国や自治体への提案などを聞きたい。

 

中川 行政とのお付き合いの方法は模索している。1社でできることに限界はある。行政の力は借りたい。しかしそれを前提にしてはいけない。補助金に甘えてはいけない。

 産地の一番星は成長戦略でも注目している。REASAS。地域未来牽引企業。地域から域外へ販売する企業は、地域の経済を牽引する。これを国が後押しする。お墨付き効果というのもある。シャンパーニュ地方で作ったスパークリングワインはシャンパンと言える。いろいろな行政の使い方はある。つなぎ役として使ってほしい。

能作 補助金は使っている。ただし、すべて目的があって使っている。補助金ありきでやってはいけない。みんなで集まってできることはたしかにあるが、まずは1社1社ががんばる。1社ががんばると産地の周囲の企業がついてくる。そういう事例がでてきてほしい。

 

③愛知県 陶器商社
産地が縮小していく中で、生産者と消費者が近づいている。
問屋に求められること、役割について聞きたい。

 

能作 商品開発を続けることだと思う。流通を変えてから思うことは、作るより売る方が大変。しかし、問屋、メーカーで反目し合っているときではない。タッグを組んで協業すべき。

林 三井物産にいたころ。商社の役割を常に問われていた。いままでやったことのない新しいことは問屋がやる。
コンサルティングなどもそう。機能としてはある。しかし、作っている人が消費者と直接接点を持つことはやはり重要。

中川 商社をファブレスのメーカーだと言って定義を変えればどうか。商社、メーカーと区別する時代ではない。

 

④富山市 小売店経営者
小売店は今後も大事な役割がある。
商品の魅力は半分。魅力を伝える役割がある。ものづくり側として小売店に求めること。

 

中川 メーカーはいきなりお店は出せない。小売店はブランドイメージに寄与する割合は非常に大きい。メーカーが気づかない商品の魅力を小売店に気づかされることは多くある。客観的にみることが小売店の役割。

能作 商品の知識をしっかり入れてきちんと伝えてもらうこと。世の中は広い。これでいいやということはない。名古屋に出店した時のエピソード。9割の人が曲がる錫をしらない。マーケットは大きい。

ここで予定の16:00となり、記念撮影をもってカンファレンスを終了した。

カンファレンスの参観者は非常に熱心に聴講され、終盤のフロアディスカッションは熱のこもった大変有意義な議論となった。登壇者、参加者、皆様に感謝したい。

その後、能作社屋に再び移動し、工場見学の後17:00より懇親会となった。

協賛企業様、会員企業様、行政関係者、その他協会でお誘いした企業様が参加され非常に活発でよい雰囲気の懇親会となった。

18:30 岡田贊三理事のあいさつにより中締めとさせていただいた。

20:00~22:00 高岡市内の飲食店へ移動し、引き続き懇親二次会を行った。
会員企業と昼間お茶席を開いていただいた木村宗慎氏が参加され、各企業の課題、工芸の課題、協会の今後について活発に議論がされ、木村宗慎氏のあいさつによりお開きとなった。

 

以上

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